熊本県球磨郡・錦町にある「まるふくふぁーむ」。清流と山々に抱かれた土地で、代々続く畑を受け継ぎ、梨と桃を育てています。
レゲエを趣味に持つ生産者さんは、音楽を楽しむように肩の力を抜きながら、果樹に向き合ってきました。
今回は、産直アウル編集部がまるふくふぁーむの生産者さんにインタビューしました。梨への強い思い、そして特別な桃「浅間白桃」への挑戦について伺います。

農業を継ぐ決意と家族への想い
現在は家業を継ぎ、7人のお子さんと共に畑に立つ生産者さんですが、その道のりは最初から農業一筋だったわけではありません。若い頃は地元を離れ、運送会社で倉庫作業に携わっていました。
「30歳を前に、祖父母が続けてきた農業をどうするかという話が出ました。父は別の仕事をしていましたし、もし父が戻ってきても桃はやめてしまうだろうなと思って。『桃がなくなるのはもったいない、自分が継ごう』と決意しました」
当時の仕事は拘束時間が長く、子どもと過ごす時間が取りづらかったそうです。農業を継ぐ決意の背景には「子どもたちに果物が身近にある生活をさせたい」という想いもありました。今では7人に増えたお子さんと一緒に畑に立つことが、何よりの幸せだと語ります。

希少な青梨「秋麗」と濃厚な赤梨「あきづき」
まるふくふぁーむが特に力を注ぐのは梨づくりです。現在出荷しているのは青梨『秋麗(しゅうれい)』。熊本県が推奨する品種で、生産量も限られた希少な梨です。
「秋麗は、20世紀梨に近い青ナシの一種で、さっぱりとした甘さが特徴です。ただ、見た目に“さび”が出やすく、正直あまり見栄えはよくないんです。そのせいで他県ではあまり作られていないのかもしれません。でも一度食べた方からは『こんな梨があるなんて知らなかった、やみつきになる』とよく言っていただけます」
見た目の派手さはないものの、口にすると忘れられない味わい。さっぱりとした甘さで食後にもすっと喉を通る心地よさが魅力です。消費者から「また食べたい」とリピートされる理由がよくわかります。
一方、秋には赤梨系の『あきづき』も栽培しています。こちらは秋麗とは対照的に、見た目も立派で大玉。しっかりとした甘さを楽しめる品種です。
「あきづきは大玉で、ガツンとした強い甘さが特徴。秋麗とはまた違う良さがあって、どちらが好きかは人によって分かれます。梨はそれぞれに個性があって、食べ比べていただくのも楽しいと思います」
秋麗のさっぱりとした上品な甘さと、あきづきの濃厚な甘さ。対象的な味わいを育てることで、お客様により幅広い楽しみ方を提供しているのがまるふくふぁーむの梨づくりです。

7種類の桃と特別な「浅間白桃」
梨に比べると「まだ勉強中」と語る桃ですが、実際には7種類もの品種を育てています。初夏から夏の終わりまでリレーのように収穫が続くため、長い期間桃を楽しめるのも特徴です。
「桃は7種類育てていますが、まだ勉強中です。日川白鳳やつきあかりは人気がありますし、いろいろな品種を試しています」
その中で特に特別な存在が浅間白桃。栽培の難しさから生産者が減っている品種ですが、まるふくふぁーむではあえて挑戦しています。
「浅間白桃は“桃農家が桃農家に送る桃”とも言われるくらい特別な品種です。栽培が難しいため作る人は少ないですが、子どもの頃に初めて食べて衝撃を受けた味を、どうしても残したいと思っています。香りが鼻に抜けて、口いっぱいに広がる——本当にすごい桃なんです」
浅間白桃は「桃の中の桃」と言える存在。香りの華やかさと濃厚な味わいで、一度食べれば忘れられない特別な体験を与えてくれます。
「九州の桃は柔らかめ、東北の桃は固め。同じ品種でも地域で違います。追熟すると柔らかさは変わりますが、糖度は変わらない。柔らかさで口の中の感じ方が変わるんだと思います」
地域ごとの気候がもたらす違いにまで目を向け、食べる人の体験を大切にする視点からも、生産者としての真摯な姿勢が伝わります。
古き良き栽培法と生産者としての誠実さ
長年農業に携わってきたお父さまから受け継いだ知恵も、まるふくふぁーむの大きな強みです。古き良き栽培方法を守りながら、現代に合った工夫を取り入れています。
「父が農業試験場で働いていたこともあって、古き良き栽培方法を守っています。サイズを揃えることを徹底して、狙った大きさで仕上げられるように管理するんです。それによって量も質も安定します」
さらに、生産者としての誠実さが際立つのもまるふくふぁーむの魅力です。
「出来が悪いときは、はっきり“今年は出来が悪い”と伝えます。糖度が少し低ければそのことも。いいときだけでなく、そういう部分も正直に伝えるのがお客様への責任だと思っています」
良いときだけを強調せず、正直に「今年の出来」を伝える姿勢は、リピーターからの厚い信頼につながっています。
清流と自然に恵まれた錦町の風土
熊本県南部に位置する錦町は、水源が近く清流に恵まれた地域です。自然環境だけでなく、歴史や風土も特徴的な土地柄があります。
「ここは水がきれいで、自然が豊かなんです。大平渓谷からの清流を使って栽培できるのは恵まれていると思います。熊本の中でも南に位置するので鹿児島や宮崎に近く、アクセスもいいんですよ」
「“剣豪の里”とも呼ばれていますし、フルーツの産地としても知られています。盆地なので台風の影響は受けにくいんですが、豪雨のときは被害が心配になります。ただ、うちの畑は標高が高いので比較的被害を受けにくかったですね」
清らかな水と豊かな自然が果樹を育て、歴史と文化が人々の暮らしを形づくる——錦町ならではの風土が、まるふくふぁーむの果物に息づいています。
家業を守り、未来へ広げる挑戦
これまで代々受け継がれてきた畑を守りつつ、未来に向けた展望も描いています。
「まずは家業をしっかり守りつつ、少しずつ農園を広げたいです。いずれは法人化して、地元の若い人たちが働ける場所をつくれたらと思っています。農業は天候に左右されて大変なことも多いですが、家族や地域と一緒に美味しい果物を育てていけることが幸せですね」
梨と桃に込められた熱い思いは、家族と地域の支えによってさらに大きく実を結んでいきそうです。
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